加賀市小中学校にゲン寄贈

核戦争を防止する石川医師の会では2011年以降、石川県内の小・中学校に漫画『はだしのゲン』全10巻(以下『ゲン』)を寄贈する運動に取り組んでいます。

2023年度は羽咋市立小・中学校への寄贈を予定していましたが、全校きれいな状態で所蔵されているとのこと。そこで、次に打診予定だった加賀市立小・中学校に寄贈することになりました。

加賀市には小学校が17校、中学校が6校ありますが、このうち『ゲン』を所蔵していない学校や、所蔵本の状態が良くない学校を中心に、小学校11校、中学校4校に寄贈しました。共同の取組をしているNPO法人はだしのゲンをひろめる会からも、中学校全校に英語版が寄贈されました(寒波の影響で寄贈式ができなかったため、2023年1月30日に宅配便でお送りしました)。

加賀市教育委員会様より「感謝状」をいただきましたのでご紹介します。加賀市教育委員会様、ありがとうございました!

◆小・中学校にアンケートを実施

この寄贈運動は、ある意味、子どもたちへの片思いのような取組です。私たちは、寄贈本一冊一冊にメッセージを貼り付けて贈っているのですが、その後学校でどのように所蔵・活用されているのかはわかりません。読後感想などが寄せられることもないので少し寂しい気もするのですが、寄贈前に実施する小・中学校向けアンケート結果が、この運動を継続する大きなモチベーションになっています。

※後日、分校小学校よりお礼状を頂戴しました。このようなお手紙を頂くのは寄贈運動開始以来初のことで、大変嬉しく拝読しました。

◆加賀市の平和教育

質問内容は、①『ゲン』の所蔵状況、②所蔵本の状態、③貸出の有無や貸出数、④『ゲン』を読んだ生徒の反応、⑤平和教育の実践です。特に、特色ある平和教育の実践に触れると、片思いがいずれ成就するであろう未来が見え、嬉しくなるのです。

加賀市では、多くの学校で原爆祈念日に合わせた平和集会が行われています。アニメ映画「はだしのゲン」を観たり、戦争の被害や加害の歴史を学んだり、折り鶴や平和のパネルを広島に送るという取組も。このほか、高学年が「調べ学習」の成果を発表する学校もあり、そのテーマは広島や長崎にとどまらず、沖縄が入ることもあるのだとか。たった数行の回答からも、先生方や生徒さんの熱意が伝わってきます。

◆『ゲン』は読まれなくなっている?

一方、今回のアンケートではショックな結果もありました。『ゲン』を貸出している学校に利用数を聞くと、「年に0人」「年に数人」「あまり読まれていない」という回答が並んでいたのです。寄贈運動を始めた12年前には、「今も多くの子どもたちに読み継がれ、ボロボロになっている」との声がたくさん寄せられたものですが、その頃と何か変わってきているのでしょうか?

『週刊少年ジャンプ』での連載開始から今年で50年になる『ゲン』。新しい漫画が膨大に生まれては消費されていく現代にあって、『ゲン』はそのトレンドから随分遠い所にあるのかもしれません。しかし、ジャンルが「古典」になったからと言って、その魅力が半減するわけではありません。むしろ、ロシア・ウクライナ戦争のただ中にある今、『ゲン』に描かれている世界は、同時代もしくは近未来として、よりリアルに感じる状況にあるのではないでしょうか?ですから、読まれなくなった要因は様々あるにせよ、再び多くの手に取ってもらうには、子どもたちが『ゲン』に出会いやすい環境をつくることが重要ではないかと思っています。

◆「平和コーナー」の活用

それを示すように、図書室に「平和コーナー」が置かれた学校では、月10人もの利用があるとの回答がありました。子どもたちに限らず私たち大人も、図書館や書店にある特設コーナーが新しい本との出会いに繋がることも多いですよね。このような取組が広がることを願い、各学校には寄贈本と一緒に、アンケート結果もお送りしました。

この『はだしのゲン』寄贈運動は来年度も継続していきます。”平和のメッセージ”を携え、県内外、世界へと駆け巡るゲンの旅を一緒に応援していただけたら嬉しいです。

※今回の寄贈およびアンケート実施にあたり、加賀市教育委員会と加賀市立小・中学校の皆様にご協力いただきましたこと、この場を借りて、改めてお礼申し上げます。

※当会では、2023年2月10日現在、加賀市を含む13市町に、日本語版を98か所、英語版をはだしのゲンをひろめる会との共同で12か所に寄贈しました。

 

はだしのゲン50周年

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